研究概要 |
IDO-like Mbに関しては部位特異的突然変異の導入により近位ヒスチジン(His)を同定,更に分子内の全てのHisについて変異体を作成,酸素安定性に関わると予想される遠位リガンドを模索した。2つの候補残基が示されたものの(His74,His288)これらは酸素ではなく,ヘムそのものの安定に関与していると考えられた。即ち,IDO-like Mbの遠位リガンドはHis以外の残基である可能性が示唆される。以上の結果はComp.Biochem.Physiol.誌にて発表している。 IDOに関しては両生類,魚類からホモログ遺伝子を,またマウスからパラログ遺伝子を単離,大腸菌での発現に成功した。酵素パラメーターを決定したところ,これらは明らかにIDO活性を示すものの,そのKmは哺乳類1DOと比較して500〜1000倍高く,酵素効率も1/1000程度であることが判明した。従って,これらが生体内で実際にトリプトファン分解活性を担っているとは考えられない。また,分子系統樹においても,これらの低活性IDOは哺乳類IDOとは独立したクラスターを形成した。更に,有袋類を含む哺乳類のゲノム上では低活性IDOとIDO,2つの遺伝子がタンデムに配置されており,鳥類や魚類のゲノム上には低活性IDO遺伝子のみが見られた。以上を総括するに,(少なくとも)脊椎動物に広く見出されるIDOホモログはトリプトファン分解活性以外の何らかの機能を司どる遺伝子であり(proto-IDOと命名),これが哺乳類において重複,一方が高いトリプトファン分解活性を持つように進化した結果,現在の哺乳類IDOが生じたと考えられる。これらの新事実はIDOの進化を探る上で大きな前進といえるであろう。
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