研究概要 |
真核生物の核ゲノムに存在するスプライセオソーマルイントロンの起源や進化については多くの謎が残されている。これらを解明するためには、オーソログ遺伝子におけるイントロンの挿入位置のパターン解析が最も効果的だと思われる。 1.最尤法を用いてKOGデータセット(生物7種の684オーソログ遺伝子)の保存されたコーディング配列内にあるイントロン10,044個の挿入位置のパターン解析を行ない、イントロンが挿入可能な位置の頻度は12bpに一箇所と見積もった(Nguyen et al.,2005)。 2.ミトコンドリアが真正細菌由来の独自のリボソームを持つことに着目し、ミトコンドリアリボソームタンパク質(MRP)と細胞質のリボソームタンパク質(RP)の遺伝子構造を比較した。これにより、MRP遺伝子は真核生物においてイントロンを獲得した可能性が高いと推測した(Yoshihama et al.,2006) 3.イントロンのphase(イントロンの位置が、アミノ酸を指定する三塩基の前に存在する場合は0、一塩基目の後ろに存在する場合は1、二塩基目の後ろに存在する場合は2)の分布には偏りがあり、phase-0が多い。最尤法を用いてKOGデータセットを解析した結果、真核生物の進化の過程でイントロンがphase-0に挿入する傾向が高い可能性が示された(Nguyen et al.,2006)。 4.最尤法を用いて、生物22種のRP遺伝子76種のイントロン2,961カ所の進化の過程を予測した。これまでにない大規模なイントロンの消長のパターン解析により、比較的短期間にイントロンの獲得や欠失が起きた事が推測された(Yoshihama et al.,2007)。 5.アルベオラータ10種の162オーソログ遺伝子セットの保存された領域内にあるイントロン3,368個の挿入位置のパターン解析を行なった。これにより、真核生物が誕生した直後には多数のイントロンが存在していたことが推測された(Nguyen et al.,2007)。
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