研究概要 |
昨年度までの研究では,瞬目に伴うEMG波形に連続ウェーブレット変換を適用することで時間軸上の周波数変動を視覚的に捉えることが可能となった.しかし,2種類の瞬目の弁別閾値(周波数)を標準化するには至らなかったため,今年度は新たに離散ウェーブレット変換を導入し,眼輪筋EMGの周波数特性に対して統計解析を行った.得られた研究成果は以下の通りである. 1瞬目に伴う眼輪筋EMG信号にDaubechies-4マザーウェーブレットを用いて離散ウェーブレット解析を行った.直交変換ではウェーブレット係数の2乗が時間に対応するレベル(周波数帯域)の持つエネルギーとして解釈可能であるが,本研究では解析時間長によるエネルギーの和への影響を減じるために1秒あたりのエネルギーを求めレベルごとの平均エネルギーを算出し比較した.その結果,全ての周波数帯域で随意性瞬目より自発性瞬目において平均エネルギーが小さいことが明らかとなった. 2周波数帯域間で平均エネルギーを比較してみると,随意性瞬目では31.25〜62.5Hzの帯域で最大値を示すのに対して,自発性瞬目ではより高周波帯域の62.5〜125Hzで最大値を示した.平均エネルギーに対する二元配置分散分析の結果,周波数帯域と瞬目の種類の主効果が認められた.Tukey法による事後検定では,すべての周波数帯域において1%有意で随意性瞬目と自発性瞬目とに差が認められた. 3随意性瞬目と自発性瞬目は同じ眼輪筋の収縮により発現しているものの生理的メカニズムは異なることから生理的潜在機能にも違いが生じていると考えられる.よって,瞬目を用いて様々な生理的・心理的評価を行う際には,明確に2種類の瞬目を弁別する必要がある.随意性瞬目の弁別・抽出のためには,眼輪筋EMG信号の低周波数帯域に分布する平均エネルギーを指標とすることが有効であることを見出した.
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