研究概要 |
アフリカイネ由来の優良遺伝子にアプローチするために有効なアフリカイネ染色体部分置換系統群(GILs:Glaberrima Introgression Linesの略)に派生する材料をもとに,アジアイネの生産性を向上させるアフリカイネ由来の優良遺伝子座の特定を,TR比,蒸散能,草丈といった生産能力関連形質について,GILとアジアイネ親との交配に由来するF_2世代およびB_1F_4世代の分離集団を用いて行った.また,分げつ能に関しては,本研究中に作成された近似同質系統(NIL)を用いて,QTL領域のもつ遺伝的作用について明らかにした.以下にその詳細を示す. 1.TR比・蒸散能力:これまでの研究によって明らかとなっているQTL領域近傍のみが遺伝的に分離するGIL'A'(TR比)由来、GIL'B'(蒸散能)の集団を栽培条件を各種設定した上で遺伝解析を行ったところ、両形質ともに、有意なQTLを検出することができた。TR比を変化させるQTLの作用は、地下部を発達させ、地上部の成長を抑制する方向に働くことが明らかとなり、それぞれのQTLが作用する機作が明確になった。 2.草丈:新たにGIL'C'由来の分離集団を用いて解析を行ったところ、きわめて有意な2つの草丈伸長を促進する作用を持つQTLを検出した。それぞれは、座上する染色体が異なり、付随する形質の変化も異なることから、作用が別の遺伝子であることが示唆された。 3.分げつ能:QTL領域の有無のみが異なるNILをポット栽培により、精密に分げつ発生のメカニズムに注目し、調査したところ、本QTLの作用が,低位の葉位から発生する高次分げつの数を決定していることを示唆する結果が得られた。 以上より、特に、アフリカイネ由来の分げつ能に関しては、本研究機関において、一つのQTLの検出に始まり、そのQTLの作用をNILにおいて確認することができた。
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