研究概要 |
1.目的 ダイズは湛水条件下でコルク形成層から二次的に形成される通気組織(二次通気組織)を形成するが、形成程度も小さいめに、湿害の影響を大きく受ける。通気組織の形成に関する生理的・遺伝的背景を明らかにすることで、形成に関する遺伝資源の効率的選抜や遺伝子組換え技術の活用が可能となり、耐湿性ダイズ品種の育成が期待される。昨年度の試験で組織形成において外生オーキシンが関与する結果が得られたことから、通気組織の形成過程でのオーキシンの役割を明らかにする目的で,胚軸のオーキシン内生量の経時的変化を測定する。 2.方法 品種アソアオガリを供試しグロースチャンバー内で栽培した。砂200mlを充填した400mlポットに3粒播種し、初生葉展開後に+3cmの水位を保つ湛水処理を行った。処理開始後12時間おきに水面下の胚軸を採取して、オーキシン(IAA)の内生量を測定した。 3.結果の概要 湛水条件下では通気組織を発達させるコルク形成層が36時間後には形成し始めるが、その間のIAAの内生量は処理前に比べて同程度かやや低下する傾向にあった。昨年度の試験では特殊な条件下でオーキシン(IBA、IAA、2,4-D、α-NAA)を添加した水溶液で湛水処理すると形成が促進されたが、本結果より通気組織が発達には胚軸部位におけるオーキシンの直接作用ではなく、他の部位(例えば茎葉部)でオーキシンが作用している可能性がある。従って、オーキシンの作用は通気組織形成過程経路において上流にあるのではないかと考えられた。
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