研究概要 |
キクの花成誘導は主に日長(短日要求)により制御されている.しかしながら,日長以外に花成を制御する要因に温度ならびに植物ホルモンがある.そこで本課題では,キクの花成における日長と日長以外の要因との関連についての知見を収集することを目的として試験を行った。なお,栽培ギクは6倍体であり,遺伝子解析を進める上で困難が予想される。そこで,本年度は昨年度明らかにした栽培ギクのモデル系としての2倍体野生種キクタニギクを利用し、本種より単離した花成関連遺伝子の発現解析を試みた。 キクタニギクより単離した花成関連遺伝子の発現解析を試みたところ、花成に必要な短日に反応し、SOC1-like, AP1-like, TFL1-like, LEY-likeの各遺伝子の発現が誘導された。また、2種類のCO-like遺伝子は長日条件から短日条件に移すことでそれぞれ発現パターンが変化することが示された。キクの特性として、いったんロゼットを形成した場合,花成誘導には短日誘導以前の低温遭遇が必要となる。しかしながら、低温が花成促進要因として作用するばかりでなく,過剰な低温遭遇は抑制要因として作用する。そこで、花成誘導に適度な低温を与えた植物体と花成誘導に阻害的に作用する過剰な低温を与えた植物体について、短日誘導直後の各遺伝子の発現変動を調査したところ、低温遭遇量の違いによる発現量の差は認められなかった。 本課題では、キクタニギクは栽培ギクの花成制御機構解析のモデルとして利用できることを示した。また、キクタニギクより単離した花成に関わる鍵遺伝子と推察される7種類の花成関連遺伝子を単離した。これら遺伝子の中には、実際に日長誘導に応答する花成に関わる遺伝子が含まれていることが強く示唆された。しかしながら、現時点では、低温遭遇量の違いによる花成反応の違いを決定する鍵因子候補を特定することができなかった。
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