研究概要 |
本年度は真皮細胞中の色素タンパク質の変態に伴う挙動を追究した。真皮細胞に蓄積し,幼虫体色の発現に関与したINSとeCBPはワンダリング期に体液中に分泌されると考えられるが,その後の挙動は不明である。そこで真皮細胞より精製したINSおよびeCBPにDIGラベルを行い,ワンダリングday0幼虫の体液中に注射し,その後の挙動をそれぞれのタンパク質の特異抗体と抗DlG抗体を用いたイムノブロット法で確認した。 その結果,IHSおよびeCBP共に囲心細胞への取り込みが確認された。特にeCBPは取り込みが早く注射1時間後からDIG標識eCBPの明瞭なバンドが検出された。このことはワンダリング期,真皮細胞から体液中に分泌されたINSおよびeCBPが速やかに囲心細胞へ取り込まれることを意味する。一方,真皮細胞への取り込みは現在まで確認されていない。本実験の結果は真皮細胞中における色素結合タンパク質の蓄積ぶ一度体液中に分泌されたINSおよびeCBPの取り込みによるものではなく,生合成後の分泌制御に依るというこれまでの仮説を支持する。また研究の過程でワンダリング期の囲心細胞においてeCBPが激減することが明らかになった。ワンダリング期の囲心細胞は緑色をしており,調査の結果これはINSのビリベルジンとカロチノイドの一種,ルテインによることが明らかになった。囲心細胞ではINSおよびeCBPの生合成も行われているが,これらの遺伝子発現も幼虫期と比較して顕著に減少していた。現在,囲心細胞に取り込まれた後のeCBPの挙動を調査している。 本研究により真皮細胞から分泌された色素結合タンパク質が速やかに体液中から除去されることが明らかになった。今後は真皮細胞における分泌メカニズムを解明する予定である。
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