研究概要 |
昨年度までに取得した生育因子要求性難培養性微生物44株(9種)の有用性を評価するために,芳香族化合物(クロロフェノール類,フェノール),界面活性剤(ドデシル硫酸ナトリウム,直鎖アルキルベンゼンスルホン酸ナトリウム,ノニルフェノールポリエトキシレート)を単一炭素源として生育できる菌株の検索を試みた。その結果,B76-46株(Pseudomonas属の新種と推定される)がドデシル硫酸ナトリウムに対する高い分解活性を有することが明らかとなった。 次に,取得した生育因子要求性難培養性微生物の中で,特に新規性が高かったB76-62株(Proteobacteria門の新属新種細菌と推定される)とB76-32株(Bacteroidetes門の新属新種細菌と推定される)をモデル菌株とし,これらの要求する生育因子の性質について検討した。Hymenobacter sp.B76株(2005年度に活性汚泥から分離)の培養液上清がB76-62株およびB76-62株に対して高い生育促進効果を有することはすでに報告済であるが,限外ろ過膜(Ultracel-10K,30K,100K;ミリポア社),酸(塩酸),アルカリ(水酸化ナトリウム),熱(70℃,120℃)処理したB76株培養上清におけるB76-32,B76-62株への生育促進効果を調べることにより,本生育促進因子が複数種の化合物で構成されていること,最も生育促進効果を持つ化合物の分子量が30,000〜100,000で,酸・アルカリおよび120℃の熱処理に不安定であることを明らかにした。さらに,種々の細菌におけるB76-32,B76-62株生育促進活性の分布を調べることにより,本生育因子がB76株以外のHymenobacter属細菌(Hymenobacter sp.NBRC101061株,Hymenobacter sp.NBRC101062株)にも分布することを見出すとともに,一般的な培養可能細菌に普遍的に分布するわけではないことを示した。
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