研究概要 |
前年度に構築した、ジベンゾフランまたはビフェニル資化性放線菌に由来する芳香環ジオキシゲナーゼ(DfdA, BphA_<pTB1>,BphA_<K37>)を発現するRhodococcus属細菌を用いて、塩素化ダイオキシン類の分解能を解析した。ダイオキシン類のモデル基質として、ダイオキシン類構造を特徴づける6種の二塩素化のdibenzo-p-dioxin(DD)及びdibenzofuran(DF)を用いた。各芳香環ジオキシゲナーゼ発現組換え体の休止菌体に、塩素化ダイオキシン類を10ug/mlとなるよう添加し、30℃で二日間培養した。休止培養液の抽出産物をGC-MS分析し、ベクター導入株における基質残存量を基に、各発現組換え体によるダイオキシン類分解率を求めた。その結果、DfdAは1,3-DDを29%、2,8-DFをほぼ完全分解した。BphA_<pTB1>は2,3-DD、2,7-DD、2,8-DFをほぼ完全分解し、BphA_<K37>は1,3-DDをほぼ完全分解、2,3-DDを67%分解した。いずれも1,4-DD及び1,6-DDは良好に分解できなかった。次に5種類の三塩素化ダイオキシン類(1,2,3-,1,2,4-,1,7,8-,2,3,7-DD及び2,4,8-DF)の分解を同様に解析した。DfdA及びBphA_<K37>発現株はいずれの基質も分解できなかったのに対し、BphA_<pTB1>は2,3,7-DDを40%分解した。以上、本研究で開発した放線菌由来の芳香環ジオキシゲナーゼの活性発現系により、三種の芳香環ジオキシゲナーゼについて塩素化ダイオキシン類の分解基質特異性を明らかにした。本研究で構築した異種発現系及びダイオキシン類分解基質特異性解析系を利用することで、分解酵素の基質特異性改良や、塩素化ダイオキシン類分解に有用な酵素の発見につながるものと期待される。
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