研究概要 |
II型cGMP依存性プロテインキナーゼ(以下cGKII)は,その欠損マウスの解析から骨形成、特に軟骨分化において重要な役割を果たしていることが知られている。本研究では,軟骨分化におけるcGKIIの発現制御および情報伝達系の解明を試み,以下の成果を得た。 1.昨年度同定したcGKIIと特異的に相互作用するタンパク質PINCH2がcGKII候補基質のひとつとして考えられているVASPおよびそのリン酸化を検出するリン酸化抗体を用いたin vivoキナーゼアッセイにおいてcGKIIのキナーゼ活性を阻害することが明らかとなった。現在,この阻害機構について解析中である。 2.マウスcGKIIのプロモーター解析により-292/-286領域が軟骨細胞特異的な正の遺伝子発現制御に関わる重要な領域であることを明らかにした。この領域にはホメオボックス遺伝子Nkxファミリーの結合部位が存在するため,Nkxファミリーによる転写調節の可能性が示唆された。 3.ラットchondrosarcomaであるRCS細胞においてFGF2刺激によってRaf-1,Erkおよびその下流転写因子elk-1の活性化(リン酸化)が検出された。この活性化は,CNPおよび膜透過性cGMP処理によって完全に抑制された。FGF2によって活性化されたMAPキナーゼ経路はCNPおよび膜透過性cGMPによって抑制され,この抑制はMAPキナーゼ経路の上流に位置するRaf-1の活性化阻害あるいはそれよりもさらに上流での阻害に起因することが推測された。 4.AktがRaf-1活性を調節することが知られているため,CNPあるいはcGMP処理によるAkt活性の影響を検討したが,活性の変動は認められなかった。しかしながら,Aktの下流であるGSK3βがcGMP依存的にリン酸化されることが明らかとなった。
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