研究概要 |
本研究は,土石流の流動層内における層流と乱流のインターフェースの変化に着目することによって,現在の土石流構成則の適用性について検討すること,土石流における層流〜乱流への流れの遷移を明らかにすることを目的としている. 本年度は,昨年度導出したレイノルズ数について,粘性応力項と実験定数の見直しを行い,その位置づけを明確にした.すなわち,Re_1は,ダイラタント流体に一般的に用いられ,相対水深で整理できるという利点はあるが,土石流の粘性係数の次元の違いにより物理的な意味付けが不明確である.Re_2は,運動方程式中の粘性項と慣性項の比で定義されるため物理的な解釈が明確であるが,速度勾配を含むことから特殊な条件下でしか適用できない.また,本年度は水路実験を実施した.水路実験では,微差圧計と自作のダイアフラムを組み合わせた圧力センサーを用いて間隙水圧の測定を行った.実験において, ・Re_1,Re_2が良好に対応すること ・Re_1,Re_2の大きな実験:条件において間隙水圧が全圧力と等しくなる(=乱流)こと ・土石流の流れの遷移領域で,間隙水圧分布が直線から外れること を確認し,結果として,流れの遷移が生じる限界レイノルズ数は,それぞれRe_1=2000,Re_2=20であることが明らかになった.Re_1にその値を代入することによって,遷移時の相対水深を土石流濃.度の関数として定め,相対水深(h/d)20〜30という限られた条件下で層流から乱流への遷移が生じることを示した,次に,Re_2にその値を代入した上で,水流とのアナロジーから粘性底層厚さδを代表長さとして導入すると,h/δを用いることによって,間隙水圧の分布形の変化を伴う連続的な流れの遷移を取り扱うことが可能であることを示した.ここで,Re_δの値は20であるが,これは水流境界層における値(11.6〜100)と同程度である.
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