研究概要 |
NaClがクロマツ-ショウロ菌根共生系に及ぼす影響を調べた.ショウロ14菌株は7段階のNaCl濃度に調整したMMN寒天培地上で25℃,暗条件下で培養した.40日後,培養した菌糸体の長径と短径を計測して菌糸伸長を算出した.各濃度5回繰り返した.この試験から選抜した1菌株を無菌的に試験管で育成したクロマツ実生苗に接種した.対照にはMMN寒天培地のみを接種した.90日後,蒸留水か25mM NaClを試験管に加えてからさらに90日間育成し,実生苗の地上部・地下部乾重,根端数,菌根形成率を求めた.各処理5本ずつ用いた.その結果,菌糸伸長はNaCl濃度の増加に伴い減少傾向を示した.ショウロの接種により実生苗の根端数は増加傾向を示し,NaCl添加により地下部重量は減少傾向を示した.以上より,ショウロのクロマツへの定着は,細根形成を促進させることで塩条件下におけるクロマツの生残に寄与しているものと考えられた. 海岸クロマツ林における外生菌根菌の垂直分布を明らかにするため,異なる深さから採取された土壌中における外生菌根の形成状況とその分類特性を調べた.単木的に生育するクロマツ成木5本を選定し,各調査木の樹幹から160cm離れた海側の地点において土壌断面を作成し,105cmまでの4段階の土壌深から土壌ブロック(横×奥行き×深さ:10×10×15cm)を採取した.細根は外観から非菌根と菌根に大別し,後者は形態的,分子生物学的手法にもとづき,定着菌の推定を行った.採取された1388根端中,菌根は1351根端であった.現在,顕微鏡観察により菌根は7タイプに類別された.そのうちCenococcum geophilumと同定された菌根は細根自体が分布しなかった1サンプル以外の全てのサンプルで出現し,その菌根数は観察した菌根数の74.8%であった。以上から,海岸クロマツ林の表層土壌においてC.geophilumは優占する菌根菌である可能性が示唆された.
|