研究概要 |
本研究の目的は,水田農業において「地域としての存立」が強く求められているという問題意識に立ち,与件変動に対する「地域対応力」の評価方法ならびにそれを規定する要因に関して,東北の主要水田地帯を調査フィールドとして基礎的な知見を得ることである。 平成19年度にスタートした品目横断的経営安定対策は,外形基準により政策対象を選別するという,従前の経営政策とは画期をなす内容を有すものであり,農業経営にとっては極めて大きな与件変動である。3年目は,本研究における主要な対象である山形県酒田市の一地区において,政策変化に農家ならびに集落がどのように対応したのかフォローアップを行った。初年目に明らかにしたように,この対象地域では,地域農業を構成する農業生産,資源保全,マネジメントの三つの領域で,農家-ムラ・集落-昭和旧村という三層における主体が連携することによって地域農業再編が行われてきた。これまでに個別経営を基本としながらそれを補完する組織化を自律的に進め,一定の成果をあげてきた。今回の政策変動に対しても「与件対応力」が発揮されるのか検証することを目的とした。 その結果,昭和旧村レベルにおける地域社会組織は,行政からの情報伝達を円滑にする役割を果たし,ムラ・集落レベルにおいては具体的な対応策の協議が行われた。このようなプロセスを経て,地域内で画一的な対応に終結するのではなく,集落それぞれの実情にあわせて,(1)個別経営のみ,(2)個別経営と集落営農,(3)集落営農のみという3つのパターンでの対応がなされ,同地域の「与件対応力」の高さが検証された。
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