研究概要 |
本研究では,システムダイナミクスモデルを基盤としたエージェント型の地域モデルを構築し,アジアの農業地域のインドネシア,メコン流域のラオスにそれぞれ適用した.インドネシアとラオスは発展途上国であり,農業開発に伴う人口の増加と同時に,その人口を支える農業生産の増加が特徴的である.システムダイナミクスモデルでは人口の増加や農業生産量の変化をシミュレーションすることができた.このときに,農業,諸産業,林業,水産業といった国内における産業をエージェントとして扱い,GDP等でモデルを評価した.また,発展途上国では,生活排水の水系への直接流出や余剰肥料の溶脱による農業排水の流出により,流域の水質汚濁が進行している.特に農業排水については詳細な調査が必要なため国内の事例であるが,畜産,畑地,水田が高度に利用されている地区におけるモニタリングの結果から,農業の水質汚濁機構を明らかにし,汚濁負荷の排出量を定量化し評価することができた.これと同時に,モンスーンアジア農業の最も共通基盤である水田についての水質浄化機能についても確認することができた.本研究ではそれらの知見を合わせて定量化した.この定量化した値をパラメータとして上記のシステムダイナミクスをベースとしたエージェントモデルに組み込み,水質も評価指標とすることができた. 以上までの研究成果から,地域開発による人口増加,食糧生産の増加による汚濁負荷の増加量を定量化でき,GDPや水質を評価指標とした流域管理システムを構築することができた.本システムを用い,流域の将来開発シナリオを評価することが可能となることを示した.
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