研究概要 |
東郷池の水質悪化の原因メカニズムの解明に資する基礎的研究として,低次生態系-3次元流体力学モデルを構築し,同池内の溶存酸素(DO)の動態解析を行った. 1.モデルの妥当性 構築した低次生態系-3次元流体力学モデルにより,2003年の水質観測結果の再現計算を行った.その結果,全窒素,全リン,クロロフィルa,DOの計算結果と観測結果は概ね良好に一致した.これより,パラメータ値も含め妥当な水質動態予測モデルを構築できた. 2.DOの動態解析 湖底近傍での貧酸素化の発生メカニズムを調べるために,水域に作用する風応力と関連付けてDOの変動特性を検討した.その結果,年平均風速である3m/sの風が吹送した場合,3m以深の湖底近傍で貧酸素化が生じた.一方,強風に相当する風速6m/sでは,湖全域で5mg/L以上を維持した.湖底近傍では,底泥による酸素消費と移流・拡散による酸素供給が卓越するが,年平均風速では酸素供給量よりも酸素消費量が大きく上回るために湖水の貧酸素化が生じた.一方,強風時では酸素供給量と酸素消費量が同程度であり,そのためDOの低下は見られなかった.このような違いは,平均風速時で水深2m付近に密度界面が形成されるのに対し,強風時では水塊の強い鉛直混合が生じることに起因する. 3.ヤマトシジミの生息域とDO分布 東郷池の主要な水産資源であるヤマトシジミの生息域と,湖底近傍のDOの分布特性との関連性について検討を行った.その結果,夏季において年平均風速程度の風が作用した場合に湖底近傍のDOが4〜5mg/Lである領域と現在のヤマトシジミの生息域は一致した.ヤマトシジミの生息と,年平均風速吹送時の湖底近傍のDOの分布との関連性が数値実験により確認された.
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