研究概要 |
鳥獣害の発生危険性を評価するためには,農地周辺にどの様な土地利用があるのかを明らかにする必要がある。その際,よく用いられるのがバッファー分析である。バッファー分析は点や線,ポリゴンから一定範囲内の土地利用を評価が,この手法では土地利用の隣接関係や,構造を評価することが難しい。そこで,土地利用の構造に基づき,野生生物の移動可能性や農作物被害の発生可能性を評価するために,コスト距離を用いたバッファー分析手法を開発する。 コスト距離を算出する際のコスト値は,昨年度までのアンケート調査により求めた物を使用した。この値を用いて,50m毎にコスト距離バッファーを生成し,その中に含まれる土地利用を集計するスクリプトを,オープンソースGISであるGRASSを利用して作成した。また,計算結果は地点毎にテキスト形式の表として算出されるので,これを一つの表に統合するスクリプトをPythonで作製した。 獣害発生の可能性を評価する指標として,野生生物の生息地である森林の面積率が上げられる。そこで,房総半島中西部の鋸南町江月地区周辺について,1/2,500及び1/50,000の土地利用図を作成し,上記の手法を用いてコスト距離バッファー図を作成し,農作物被害の発生予測への適応性を評価した。本手法での予測は,樹林地の配置や形状を反映しており,獣害防除の評価への活用が期待される。また,1880年代の土地利用について同様に森林面積率を算出したところ,森林面積率が増加していることが明らかになった。これは,森林の連続性が増加し,野生生物の移動がしやすくなっていることを示している。 以上の成果は,国際地理学連合・土地利用被覆変化研究グループの研究集会や農村計画学会において発表した。
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