研究課題
若手研究(B)
臓器への血液供給が行われなくなった状態を虚血という。神経細胞は虚血に対して脆弱であり、数分間という短い時間でも虚血にさらされると死滅してしまう。ところで、細胞にあらかじめ死滅しない程度の短時間の虚血前処置、すなわちpre-conditioning処置を加えておくと、その後に加えられた長時間の虚血処置に対して抵抗性を示し、細胞死を回避することができるようになる。この現象は虚血耐性と呼ばれている。これまで、虚血耐性現象と言えば、もっぱらこのpre-conditioning処置によって引き起こされる現象と考えられてきた。ところが、近年、強い虚血ストレスを加えた後でも、短時間の虚血処置を加えれば、虚血による細胞死を免れようになる可能性のあることが心臓および脳を用いた実験によって示されるようになった。本研究の月的は、神経細胞においてpost-conditioning処置による虚血耐性現象が存在するかどうかについて検討することである。以下にこれまでの成果について述べる。(1)S.D.系ラットを用いて椎骨動脈部よび総頸動脈閉塞法による前脳虚血方法を確立した。(2)ラットに5分間の虚血を行うと、虚血解除直後では海馬における神経細胞死は認められないものの、虚血解除から2日以降になると神経細胞死が生じるいわゆる遅発性神経細胞死が認められた。(3)ラットに5分間の椎骨動脈および総頸動脈閉塞法を行ってから2日後に2分、2分2回、3分の短時間虚血を施したところ、2分2回の短時間虚血処置を施した群で、細胞死が抑えられる傾向を示したが、現段階では有意差は認められなかった。今後さらにpost-conditioing処置等の条件を検討し、脳におけるpost-conditioning処置の細胞死防御効果の有無を検討する。
すべて 2006
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