研究概要 |
光学活性1,1'-スピロビインダンを母核とする配位子を用いた不斉触媒反応の開発に関する研究を行い、本年度は以下の知見を得た。 (1)ロジウム(I)錯体を触媒とするアリールボロン酸のα,β-不飽和カルボニル化合物への不斉共役付加反応において、ホスファイトのフェノキシ基に電子求引基を組み込んだスピロ型ジホスファイトを用いると不斉識別能を損なうことなく触媒活性が向上することが分かった。この新規配位子は、従来の不斉ホスフィン配位子では困難なシンナムアルデヒド誘導体へのアリールボロン酸の1,4一付加反応を機軸とする3,3-ジアリールプロパナールの不斉合成において極めて高い不斉収率を実現することを見出した。 (2)ロジウム(I)錯体を触媒とするアリールボロン酸のイサチンヘの不斉付加反応において、かさ高いビフェノールを組み込んだ新規スピロ型ジホスファイト配位子を適用すると、最高92%の不斉収率が得られることが分かった。また、ロジウム(I)錯体を触媒とするN-スルホニルイミンヘのアリールボロン酸の不斉付加反応においては、フェノキシ基を特徴とするスピロ型ジホスファイトを適用すると収率に改善の余地を残すものの、98%の不斉収率が得られることが分かった。 (3)電子求引基を組み込んだスピロ型ジホスファイトがパラジウムを触媒とする不斉アリル位置換反応において非常に高い触媒活性および不斉識別能を示すことを見出した。適用可能な基質に制約はあるものの、アミンを求核剤とするアリル位不斉アミノ化反応においても高い不斉収率を実現することができた。
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