研究課題
若手研究(B)
タンパク質や酵素等の高次構造解析や反応機構の解明等に用いられる重水素(D)標識化合物は小分子量のD標識シントンやH-D交換反応等により合成されるが、いずれの手法も手間がかかる、高価な試薬・特殊な反応条件を必要とするなどの問題点を有している。一方、当研究室ではこれまでにPd/C-D_2O-H_2の組み合わせによる簡便重水素化法の開発に成功し、一般性ある高効率的D標識体合成法として確立している。また、Pt/C存在下では芳香環上でのD化反応が優先的に進行することを見出し、さらにPd/C及びPt/C共存下では芳香環及びアルキル炭素上でのD化反応が同時に進行し1段階での多重D化反応が進行することを見出している。そこでより効率的なD化法並びにD化触媒の開発を目的として異なる触媒反応点を有するPdとPtを活性炭に同時に担持させた複合金属触媒の調製及び反応性の検討を行った。まず触媒を調製するにあたり、触媒の調製法による反応性の違いについて検討した。一般にPdの活性炭担持型触媒の調製法としては2価のPd金属の溶液中に活性炭を加えた後、還元剤で0価に還元する方法により調製する。そこで今回、より高活性な複合触媒の調製を目的として、還元剤に水素、ヒドラジン、ホルムアルデヒド、水素化ホウ素ナトリウムの4種を用いて触媒を調製したところ、水素化ホウ素ナトリウムを還元剤に用いて調製した触媒が最も高い活性を示し、芳香環、アルキル側鎖共に高効率的にD化を受けることが明らかとなった。また、本触媒はD化反応において相乗効果が発現することが明らかとなり、Pd/CまたはPt/Cを単独で用いた場合よりも高い重水素化率で反応が進行し、特に立体的に込み合った部位での重水素化が効率的に進行することを明らかとした。
すべて 2005
すべて 雑誌論文 (2件)
Synlett
ページ: 845-847
J.Org.Chem. 70
ページ: 10581-10583