研究概要 |
イミダゾール、チアゾール、トリアゾールの窒素原子をアルキル化して得られる塩を塩基で処理すると対応する含窒素複素環カルベンが生成する。一重項カルベンであるこれら分子は高い求核性を持ち、特にアルデヒド基に求核付加することで生成するzwitter ionがα,β-不飽和カルボニルに1,4-付加するMichael-Stetter反応の触媒として用いられている。代表者はこの触媒的Michael-Stetter反応をエナンチオ場選択的不斉環化反応へ展開すべく本年度は効果的なカルベン触媒と最適な反応条件の探索を行なった。まずmethyl 1,4-dihydrobenzoateを出発原料として基質である4-oxo-1-(3-oxopropyl)cyclohexa-2,5-dienylmethyl acetateを合成したが、本化合物は酸及び塩基に対して不安定で容易にretro-Michael型反応が進行しフェノール誘導体が脱離することが明らかになった。そこで基質として4-oxo-1-(4-oxobutyl)cyclohexa-2,5-dienylmethyl acetateを新たに合成し、最適反応条件を検討した。まず3-benzyl-5-(2-hydroxyethyl)-4-methylthiazolium chlorideを塩基で処理して得られるチアゾリウムカルベンを触媒として最適条件の検討を行なったが目的とする生成物は得られなかった。そこで、2-phenyl-6,7-dihydro-5H-pyrrolo[2,1-c][1,2,4]triazol-2-ium tetrafluoroborateから調製されたカルベンを用いたところ低収率ではあるものの目的とする二環式化合物が得られた。このように本反応系では触媒と反応条件により収率が大きく左右されることが明らかとなった。
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