研究概要 |
前脳の神経回路のコンピューターモデルを作成し,匂い刺激時の神経活動パターンのダイナミクスを再現した.前脳では局所場電位の振動が定常的に生じている.これは前脳の全体でほぼ同期しているが,先端部と基部でわずかに時間差がある.匂い刺激は局所場電位の振動数を増加させ,先端部と基部の時間差を減少させる.また局所場電位はバースティングニューロンの自発活動とその相互作用によって作られると考えられ,その修飾は一酸化窒素によると考えられている.バースティングニューロンのモデルは,ボルテージクランプによる電位依存性チャネルのデータを取り入れたHodgkin-Huxleyタイプのモデルとして,ニューロンどうしの結合は電気シナプスによると仮定した.一酸化窒素は電位依存性カルシウムチャネルを活性化すると考えた.自発発火頻度をニューロンごとに少しずつ変え,それらを1列に並べることで,先端部と基部における活動の時間差を再現することができた.匂い刺激時の振動数と時間差の変化のタイムコースは,一酸化窒素の放出が基部に限局しているモデルでは再現できたが,先端部や前脳全体で一酸化窒素が放出されるモデルでは再現できないことがわかった. また前脳をカルシウム感受性色素(rhod-2AM)で染色し,ディスク共焦点レーザー顕微鏡を用いて測定することで,多数のニューロンの活動を高い解像度で高速に測定することが可能であることが明らかになった.これにより自発活動を持つニューロンや,匂い刺激に応答するニューロンの分布を明らかにすることが可能であることが示された。
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