研究概要 |
最近,研究代表者らは,生理条件下で特異的にリン酸モノエステルと結合するナノ分子(二核金属錯体,Phos-tag)の開発に成功した。このリン酸基結合分子をアクリルアミドに固定することに成功すれば,リン酸化された蛋白質を効率良く非リン酸化蛋白質から分離する新しい電気泳動法が確立できると考え,本研究の着想に至った。 そこで,本研究では, (1)Phos-tagにアクリルアミド基を導入した誘導体を合成し,SDS-ポリアクリルアミドゲル電気泳動(Laemmli法のSDS-PAGE)への適用を計ること, (2)様々なリン酸化状態にあるリン酸化蛋白質を分離・検出する新しい電気泳動法を確立し,キナーゼプロファイリング法として実用化すること,を目的とした。 そして,その研究実績を以下にまとめる。 リン酸基に結合能を示す機能性分子,Phos-tagを用いて新規のリン酸アフィニティー電気泳動法を開発した。これは,アクリルアミド結合型Phos-tagのマンガン錯体をSDS-PAGEの分離ゲルに共重合させ,リン酸化蛋白質をゲルシフトバンドとして検出する方法(Mn2+-Phos-tag SDS-PAGE)である。この方法ではリン酸化量やリン酸化部位の異なる蛋白質アイソフォームを同時に検出することが可能で,キナーゼ反応の進行を定量的に解析できるという利点をもつ。今回はこの利点を活用した3つのキナーゼプロファイリング法を行い,in vitroにおける様々なキナーゼ反応の解析やキナーゼ阻害剤の検定に適用できることを示し,さらには,in vivoにおけるキナ-ゼ反応の解析にも有効であることを示した。以上のことから,この新しい電気泳動法が,今後のリン酸化プロテオーム研究に貢献できることを期待する。 なお,本研究成果により研究代表者は,2006年度第7回日本電気泳動学会奨励賞を受賞した。
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