研究概要 |
1HRD1は,ERADに関与するユビキチンリガーゼ(E3)で,アルツハイマー病における老人斑の主成分であるβ-amyloid(Aβ)前駆体蛋白質(APP)の分解を促進し,Aβの産生を抑制することをこれまでの研究で明らかにしている.本年度では,HRD1が神経芽細胞腫SH-SY5YにおいてAPPと小胞体で共局在し,一部は小胞体外でアグリソームと考えられるAPPとHRD1の凝集体を形成することを見出した.この凝集体はプロテアソーム阻害薬によって増加することがわかった.また,HRD1の発現をsiRNAによって抑制すると,APP過剰発現SH-SY5Y細胞で神経細胞死を有意に誘導した.このとき,APPの凝集体が減少したことから,HRD1はAPPをユビキチン化し,プロテアソームによって分解すると共に,アグリソームとしてAPPを保存することにより,APPによる神経細胞死を抑制している可能性が示唆された. 2.ERAD関連遺伝子をバイオインフォマティクス的探索とクローニングを行い,そのうち5遺伝子について,小胞体ストレス抑制効果を有することを見出した.それらのうち,SEL1およびKF-1についてHRD1とともにトランスジェニックマウスを作成した. 3.コレステロール生合成関連化合物のうち,ファルネシルピロリン酸(FPP)とその代謝物farnesol,およびスクワレン合成酵素阻害薬zaragozic acidによってHRD1が誘導されることを見出した.また,FPP,farnesol,zaragozic acid処理によって,HRD1の誘導は小胞体ストレス応答経路非依存的に起きていることを示めした.さらに,FPPおよびfarnesolは小胞体ストレスとなる低酸素によって誘起される細胞死を抑制することを明らかにした.
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