研究概要 |
ChkはCskチロシンキナーゼとともにCskファミリーを構成しており,機能および構造的にこれらは類似している。しかしながらCskが細胞核内には分布しないのに対し,Chkは核にも分布する。本年は,Chkの核局在に関与するドメインについて検討した。また,核局在型変異体を用い,細胞増殖に与える影響について解析した。 1.Chkチロシンキナーゼの核局在に関与するドメインの検索:ChkはCskには存在しないN末端ドメインを持つ。このN末端ドメインを持つ野生型とN末端ドメインを欠失した変異体を用い,核への局在の違いについて検討した。培養細胞への過剰発現では局在に差が認められなかったので,核への結合性を顕微鏡下で調べることが可能な実験系を構築した。この方法を用い検討した結果,N末端ドメインをもつ野生型Chkが,N末端ドメイン欠失変異体よりも強く核へ結合するのを観察した。これはN末端ドメインが核に結合することを示唆しており,N末端ドメインのみで核への結合性を示す結果も得られた。 2.核結合配列の探索:N末端ドメインをさらに前半後半に分け,核への結合性を検討した結果,後半部分に結合配列が含まれることを見出した。 3.核マトリックスへの結合:細胞核を界面活性剤,DNaseI,硫安,2M NaClで順次処理して核マトリックスを調製した。N末端ドメインは核マトリックスに結合した。 4.核マトリックスのリン酸化:遺伝子導入によりChkを発現させた細胞から核マトリックスを調製し,チロシンリン酸化を蛍光顕微鏡により調べた結果,Chkの発現により核マトリックスのリン酸化の亢進が観察された。 5.Chkチロシンキナーゼの核局在と細胞増殖に与える影響:核局在型Chk変異体を発現させると細胞増殖を抑制した。核の形態変化と細胞周期S期の遅延が観察された。
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