研究概要 |
本研究は昨今問題となっている新興・再興ウイルス感染症に対する創薬シーズの探索を目的とする。新興・再興ウイルス感染症の多くは、ウイルスが生物種を超えて伝播することに起因する。従って、個々のウイルス感染症に対する薬剤だけでなく、ウイルス共通の感染機序に基づいた薬剤の開発が重要となる。そこで、殆どのウイルスの感染・増殖に必須である小胞体N-結合型糖鎖プロセシング酵素に注目し、それら酵素に対する特異的基質を設計・合成する事により「高感度・高速・簡便アッセイ法」を確立すると共に、抗ウイルス化合物の探索を行っている。 本年度は、前年度に引き続いて小胞体N-結合型糖鎖プロセシングの1つであるマンノシダーゼIおよびマンノシダーゼIIの基質の合成法の確立とそれらの合成を行った。マンノシダーゼIは非還元末端から2番目のα-1,3結合を、マンノシダーゼIIはα-1,6結合を認識している。更に、ヒト由来小胞体マンノシダーゼのX線結晶構造解析が行われた事により、それらの質結合部位を3次元的かつ論理的解析することが可能となった。 そこで、計算化学的手法を用いて昨年度設計したいくつかの基質分子と酵素のドッキングモデルの構築を行う事により、非還元末端側から、Manα-1,2Manα-1,2Man、Manα-1,2Manα-1,3Man、Manα-1,2Manα-1,4Man、Manα-1,2Manα-1,6Manとしたマンノトリオースを基質候補化合物とし、特異性の解析を行う事とした。これら基質となるマンノトリオースの合成は、それぞれの単糖ユニットへの修飾が容易に行えるように還元末端側から単糖ユニットをグリコシル化する合成法を採用し、アセチル基を脱離基としてマンノシル化を行う事により、主たる合成法の確立を行った。本鍵反応を用いて基質分子の合成を行った。
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