研究概要 |
本年度は、トランスポーターの寄与率を簡便に測定する方法として、トランスポーター選択的な阻害剤を用いた寄与率の解析法を試みた。その結果、OATPIB1選択的な基質であるestrone-3-sulfate(E-sul)を用いて、OATP1B1,OATP1B3発現HEK293細胞での代表的な基質の輸送に対する阻害をかけたところ、OATP1B1を介した輸送のみを低濃度で阻害した。従って、適当な濃度を選択することで、E-sulは、OATP1B1を介した輸送だけを阻害できる可能性が示唆された。一方で、OATP1B3選択的基質であるcholecystokinin octapeptide(CCK-8)については、阻害剤としてはOATP1B1,1B3の選択性がないことが示された。次に、OATP1B1で主に輸送されると過去に報告しているpitavastatin, estradiol-17β-glucuronide(E_217βG)と、OATP1B3で主に輸送されるtelmisartanについてヒト凍結肝細胞への取込みに対するE-sulの阻害効果を観察したところ、pitavastatin, E_217βGについては、E-sulによる阻害が見られたものの、telmisartanについては、E-sulによる阻害が観察されなかったことから、本方法論も寄与率評価において簡便な方法のひとつであることが示唆された。さらに、胆汁排泄機構の多様性を評価するために、OATP1B1/MRP2,MDR1,BCRP共発現細胞を用いて経細胞輸送を観察したところ、valsartan, olmesartanについては、OATP1B1/MRP2発現細胞において最も大きな輸送が観察されたのに対して、telmisartanについては、すべての細胞で同程度の経細胞輸送が観察されたことなどから、同系統の薬物であっても、胆汁排泄に関与するトランスポーターが異なることが示唆された。これらのことから、in vitro実験系を用いて寄与率を簡便に評価できる系が動態の変動予測に有用であることが示された。
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