研究概要 |
本研究は,当研究室において構築された遺伝子組換え技術を基に,安全性及び有効性に優れた,特に抗酸化能を有するアルブミン製剤を開発することを目的として企図された. 抗原性を考慮して,ヒト異型アルブミン(variant)に着目し,1残基置換variantの抗酸化能を評価した.その結果,ヒト血清アルブミン(HSA)の抗酸化能に関与するアミノ酸残基として,^3His,^<122>Val,^<410>Arg及び^<505>Gluが,HSA自身の構造及び機能を維持する上で必須なアミノ酸残基として機能している可能性が強く示唆された. そこで,特に抗酸化能が顕著であった^<410>ArgをCysに変異したvariant R410Cに着目し,yeast-E.coliのシャトルベクターpHIL-D2上でAOX1のプロモーター下流にシグナル配列とポリA配列を含むHSAcDNAを挿入した発現ベクターを作製し,部位特異的に変異させた後(^<410>ArgをCysに置換),このベクターでPichia pastoris(GS115株)を形質転換し,BMMY培地培養後,培地上清より60%硫安分画により濃縮を行い,Blue Sepharose CL-6Bを用い,R410Cを精製した. アルブミンミュータントR410Cにおいて,その構造・体内動態特性について検討した結果,CDスペクトル法により,変異による構造変化は観察されなかった.また,ラットにR410Cを静脈内投与し血中半減期を検討した結果,血漿由来のアルブミン(pHSA)と比較して若干の消失の促進が観察された. 以上の結果から,遺伝子組換えアルブミンとして設計されたR410Cは,ヒト由来のvariantであるため,抗原性の心配がないことに加えて,抗酸化能という新たな機能を有したアルブミン製剤として機能する可能性が強く示唆された.
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