研究概要 |
7〜8週齢のSD系雄性ラットをケタミン(90mg/kg)+キシラジン(10mg/kg)で麻酔し,電気毛布で体温を37℃に維持した.片眼の前眼房に,ラットの眼の位置から約175cmの高さの位置に置いた生理食塩水入りのタンクと接続した注射針を刺入し,眼内に130mmHgの圧力を負荷し,網膜虚血を誘発した.網膜虚血を60分間負荷した後,前眼房から注射針を抜くことにより再灌流した.反対側眼は無虚血対照とした.無虚血対照および再灌流24時間後の網膜組織を採取し,ウエスタンブロットによってサイクリンD1,cyclin-dependent kinase(CDK)2,4およびp16やp27などのCDKインヒビタータンパク質をはじめとする細胞周期調節因子の発現量の変化を検討したところ,再灌流24時間後の網膜組織では,無虚血対照と比較し,サイクリンD1およびCDK4の発現が増加しており,また,p16およびp27の発現が減少していることが明らかとなった.この結果から網膜虚血・再灌流傷害にCDKの活性化による細胞周期の異常進行が関与している可能性が考えられたので,次に,CDK阻害薬が網膜虚血・再灌流傷害に与える影響を検討した.同様の方法でラットに網膜虚血・再灌流を負荷し,再灌流7日後に眼球を摘出した.固定後,パラフィン包埋し,薄切組織切片を作成する.再灌流7日後に摘出した眼球の切片はH-E染色を行い,神経細胞の脱落を評価した.虚血15分前にCDK阻害薬であるロスコビチン(3mg/kg)やCDK4 inhibitor(1mg/kg)を投与した群と溶媒を投与した群とを比較したところ,これらのCDK阻害薬は網膜虚血・再灌流により惹起される視神経細胞死を抑制することが明らかとなった.
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