研究概要 |
PTENは広範な腫瘍において変異の見られる癌抑制遺伝子であり、その先天的なヘテロ異常はCowden病、Banayan-Zonana症候群などの過誤腫を伴い高率に悪性化する疾患を引き起こすことが知られている。EGF, PDGF, IGFなど様々な成長因子受容体刺激によって活性化されるPI3キナーゼは、ホスファチジルイノシトール二リン酸(PIP2)をリン酸化してPIP3を生成し、それによりAktを介するシグナル伝達が活性化される。Akt自身癌遺伝子であり、PI3キナーゼ経路の異常は癌化において重要であるが、PTENはPIP3を脱リン酸化する脂質フォスファターゼであり、PI3キナーゼの経路を負に制御している。 PTENは小細胞性肺癌における変異がいくつか報告されており、非小細胞肺癌においてもその約半数においてPTENの蛋白発現が減少〜消失することが報告されていることから、PTENの異常が広く肺癌の発症に関与している可能性が高い。 本研究ではPTENfloxマウスと、肺胞上皮細胞特異的かつDoxycyclin依存的にCreを発現するトランスジェニックマウス(J.A.Whitsett博士より供与)とを交配し、肺胞上皮細胞特異的PTEN欠損マウスを作成した。これらマウスにおいては、90%が出生直後に肺胞上皮の過形成のために死亡し、のこりの10%は長期に生存した。これらのマウスを長期観察したところ、高率に非小細胞肺癌が発症した。現在これらの分子メカニズムを詳細に解析中である。
|