研究概要 |
PPARδの膵島における役割を明らかにする目的で,グルコース応答性のインスリン分泌(GSIS)に及ぼすPPARδアゴニストの影響を検討した.その結果,PPARδアゴニストのGW501516は用量依存的にインスリン分泌を促進することを明らかとした.インスリン分泌促進作用の機序を明らかにするため,ATP/ADP比を測定したが有意な影響は認められなかった.また,DNAマイクロアレイ解析を用いて膵島におけるPPARδ標的遺伝子の検索を行ったところ,脂肪酸代謝に関連する遺伝子に加えWntの受容体であるLRP5の誘導が認められた.定量的PCR法を用いてWnt関連遺伝子に及ぼすPPARδアゴニストの影響を検討したところ,LRP5に加えLRP6やsFRP4の誘導が認められた.しかし,PPARδアゴニストはLRP5ノックアウトマウスの膵島においてもGSISを亢進させたことから,LRP5-Wntシグナル系を介した作用ではないことが示唆された. 脂肪細胞分化におけるWntシグナルの役割とPPARγ発現に及ぼす影響を検討するため,定量的PCRを用いてWnt4およびLRP5の遺伝子発現変動について経時的に測定した.Wnt4は分化開始初期に一過性の誘導が認められ,その後発現が低下した.一方,LRP5は経時的な発現誘導パターンを示した.PPARγの発現はWnt4の一過性の発現上昇の後に認められた. 骨格筋のインスリン感受性に及ぼすWnt/LRPシグナルの関与を明らかにするため,L6筋管細胞にWnt3a conditioned medium添加し,インスリン存在,非存在下における2-デオキシグルコースの取り込みを測定した.その結果,Wnt3a処理によりL6筋管細胞でのグルコースの取り込み亢進が認められた.Wnt3aはインスリン受容体基質IRS1のmRNAおよびタンパク発現を誘導した.
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