研究概要 |
Fanconi貧血症(FA)は、進行性の骨髄不全や好発ガン性を示す遺伝性疾患で、細胞レベルではマイトマイシンC等のDNA架橋剤に対する極度の高感受性、染色体不安定性を特徴とする。現在少なくとも12の相補群が存在し、そのうち11遺伝子はすでにクローニングされているが、個々の遺伝子の機能やその相互作用において依然として不明な点が数多くある。一方、Bloom症候群(BS)は、常染色体劣性の遺伝性疾患で、発育不全や好発ガン性を示す。原因遺伝子BLMヘリケースの欠損による姉妹染色分体交換(sister chromatid exchange, SCE)の亢進と染色体不安定性が特徴的である。 我々はダブルノックアウトによる遺伝学的検討でFA経路とBLMヘリケースがエピスタシスを示すこと、FA経路がBLMヘリケースの核内フォーカスの形成を制御していること、FA経路のキーファクターであるFANCD2とBLMヘリケースが共局在し、一部が実際に共沈降できることを明らかにした(EMBO J. 2005 24(2):418-27)。症状が全く異なるふたつの疾患の病態に実はクロストークが存在していたと解釈できる。今回我々は、Yeast Two Hybridシステムを用いて、FAタンパク質とBLMヘリケースの会合を解析した。BLMヘリケースはFAコア複合体の要素であるFANCA, FANCE, FANCFの3つのFAタンパク質と直接会合すること、さらに各蛋白のBLM結合部位マッピングを行い、それぞれのFAタンパク質がBLMヘリケースと別々の場所で結合している事を見いだした。現在、リコンビナントタンパクを合成し、それぞれの会合を確認中である。
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