研究課題
若手研究(B)
肝前駆細胞は門脈域周囲のヘリング管と小葉内細胆管に存在し、多くの機能を持つ細胞とされる。この細胞は上皮型中間径フィラメントのcytokeratin19(CK19)やCK7、神経細胞接着分子(NCAM)を発現していると報告されている。近年肝細胞癌発癌においては肝細胞のみならず、この肝前駆細胞も発癌に関与しているという報告がなされた(Roskams 2006)。一方、肝細胞癌は周囲との境界が不明瞭で周囲肝細胞を置換性に発育するいわゆる早期肝細胞癌から脱分化と呼ばれる現象を経て進行癌へと進展する事がわかっている。前出のRoskamsらの報告では色々な分化度の肝細胞癌を用いてその検討を行っているため、どの段階でCK7やCK19を発現する形質が獲得されたかはわからないため、肝前駆細胞が肝細胞癌発癌に関与しているかは正確にはわからない。そこで肝前駆細胞からの発癌経路の存在の有無を検証するため、早期肝細胞癌である初期高分化肝細胞癌症例79例を対象にCK19の免疫組織化学を行った。早期高分化肝細胞癌においては従来報告されているような腫瘍細胞が5%以上CK19陽性を示す症例は存在しなかった。腫瘍組織内に残存する可能性のある胆管細胞(CK19陽性になる)との鑑別が厳密には困難であったため、腫瘍組織内に残存する門脈域から十分にはなれた位置にCK19陽性腫瘍細胞が存在する症例を改めてCK19陽性症例とすると陽性症例は79例中24例(30%)に見られた。そこでCK19陽性例と陰性例を比較するために臨床病理学的に検討したところ、背景となる肝臓組織で肝細胞不規則再生の所見の一つである多形化が見られる症例にCK19陽性症例が有意に多く見られた(p<0.01)。一方、Large cell dysplasiaや前癌病変とされるSmall cell dysplasiaが見られる肝臓にはCK19陽性症例はあまり認められない傾向が見られた(p<0.1)。これらの結果より、肝前駆細胞はいわゆる前癌病変からの発癌にはあまり関与せず、むしろ多形化が見られる肝臓において発癌の際に何らかの関与をしていることが推察される。現在更に検証を進める為に多重蛍光の系を確立している最中である。
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