研究概要 |
これまでにRET-MEN2Aトランスジェニックマウスに発生した甲状腺髄様がん・耳下腺がん・乳がんの3種のがん組織の遺伝子発現プロファイリングの比較検討の結果、正常組織と比較してRET-MEN2A発現腫瘍で共通して4倍以上の発現変化を示す遺伝子46を同定できた。これらの46遺伝子の中で特に発現差が大きく、腫瘍において発現増加が目立ったものとして、DUSP-4(MKP-2)があげられた。各種腫瘍細胞株におけるMKP-2の発現をリアルタイム定量PCRやウエスタンブロッティングで検討したところ多くの細胞株でMKP-2の高発現が確認されたほか、同じMKPファミリーであるMKP-3やDUSP-8の遺伝子も腫瘍において高発現を示すことが確認された。 RET-MEN2Aトランスジェニックマウスに発生した乳がん由来の細胞株を用いて解析をしたところ、MKP-2のほかMKP-3,4およびDUSP7,8,9,16の高発現が乳がん細胞株で確認された。MKP-2に対するsiRNAを作製し、MKP-2をノックダウンしたところ、腫瘍細胞の増殖は著しく抑制された。また、培養細胞でMKP-2を高発現させた時に、p38MAPKの系もJNKの系もその活性は抑制されなかったが、ERKの系のみ脱リン酸化がみられて、ERKの系が抑制されたことから、RET-MEN2Aによる腫瘍増殖の上でMKP-2が重要な役割を果たしていることが示唆された。乳がん細胞株でMKP-2をノックダウンしたときに、抗ガン剤でひきおこされるapoptosisがどのように影響を受けるかの解析も行った。
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