研究概要 |
急性期病院を対象としたDPC(Diagnosis Procedure Combination)に基づく包括医療制度が平均在院日数に及ぼす影響を分析することを目的として,平均在院日数と収支変動の関連を解析する数理モデルによって、平均在院日数短縮による増益をシミュレートした。その結果,外科手術および心カテーテル・インターベンションについては収入増が材料費増を上回ったが、保存的治療を行う内科的疾患の多くは逆に在院日数短縮による平均材料費増が収入増を上回った。787診断群分類、計3,138人のDPC収入を入院レセプトデータから,さらに各ケースにおける医療材料費をレセプトデータおよび処置オーダー・データから推計した。また,各ケースで出来高払い方式により請求した場合の入院基本料・投薬量・注射量・検査料等を計上し、それらの総額とDPCにおける診療点数とを比較した。その結果、各診断群分類別の医療材料費率(収入に対する医療材料費の比率)は,総平均が20.8%であり、外科系疾患の材料費率がやや高い傾向にあった。DPC点数/出来高支払点数の比率は平均1.041であり、DPCによる診療点数が平均4%程度高くなる傾向が示された。医療材料投入量の在院日数別の分布を診断群ごとに調べた結果、外科手術疾患においては手術当日および術直後の一定期間において材料投入が集中、内科急性期疾患においては入院後数日〜1週間に材料投入が集中しており、平均在院日数短縮によっても1入院当たりの材料費はほとんど軽減できないことが明らかとなった。 以上のことから,DPCに基づく包括支払制度は、在院日数短縮の経済的インセンティブが必ずしも働かないことが示唆された。
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