研究概要 |
本研究は、医療の質の評価を、患者の視点から適切に行える評価手法の開発を行い、臨床現場で活用しやすい評価結果・評価データを提示するシステムの検討を目的として行った。 まず、AHRQで用いられているCAHPSの項目や過去の国内の研究で用いられている項目を参考に、患者の視点から医師の質を評価するための評価方法・項目を検討した。評価方法は4つの方法を試行し、患者の視点から最も妥当といえる評価方法を検討した。調査は2,000人を対象とし、回答は557名から回答が得られた。4つの評価方法は、(1)従来の評価方法(肯定的な質問文を配し、かなりそうである〜全くそうではない、の選択肢とする)、(2)否定的な質問文を配する方法、(3)肯定的な質問文を配し、その頻度を尋ねる方法(いつもそうである〜まったくそうではない)、(4)否定的な質問文を配し、その頻度を尋ねる方法、の4つを対象者に無作為割付を行ってその回答を比較した。 その結果、従来の評価方法(1)と否定的な質問を配する方法(2)では、その結果が裏返しとはならず、従来の評価方法(1)で肯定的評価率が高く、従来の評価方法(1)が適切な評価方法といえないことが示唆された。また、選択肢を頻度とする評価方法(3)(4)では、(4)の方法の場合、10項目ののべ評価のうち、いつもそうであるが4.3%、しばしばそうである6.2%、たまにそうである27.6%と、改善すべきポイントが明示されやすい結果となった。信頼性係数(内的一貫性)はα=0.90、TIPS-J(日本語版Trust in Physician Scale)との相関係数も0.60と比較的高いことから、この方法の有効性は高いといえる。方法(3)の場合、方法(4)の裏返しの結果が得られたが、TIPS-Jとの相関係数0.49と低いことから、方法(4)が実践的に推奨される方法であることが示唆された。
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