研究概要 |
本研究は,緑膿菌において,カルバペネム系薬耐性に関わる外膜タンパク質(OprDおよびOprM)の産生量の変化を迅速に検出する検査診断法の構築を目的とし,カルバペネム系薬耐性の迅速検出ならびに病院感染のアウトブレイクの早期発見に臨床応用しようとするものである。 平成17年度までに,臨床分離された多くの緑膿菌株を用いて分子生物学的解析を行い,カルバペネム系薬耐性に関わる外膜タンパク質OprDのアミノ酸配列(変異)の特徴を明らかにした。これらの解析から得られた情報に基づき,平成18年度はOprDに対する抗体の作成とその評価を進めてきた。複数の合成ペプチドをもとに,家兎を用いて抗体を作成したところ,3種類の抗体(抗OprD-Mix抗体,抗OprD-Mix3抗体,抗OprD-Mix4抗体)が得られた。これらの抗体とPseudomonas aeruginosa PAO-1の外膜タンパク質OprDとの反応性をWestern blot法により解析したところ,抗OprD-Mix3抗体のみがOprDと反応した。抗OprD-Mix3抗体が認識する領域は,臨床分離株間でアミノ酸配列が多様性に富む領域であった。一方,OprMもカルバペネム系薬耐性に関わる外膜タンパク質として知られていることから,OprMを認識する抗体の作成も試みた。OprDの場合と同様にして抗体の作成を行ったところ,3種類の抗体(抗OprM-Mix抗体,抗OprM-Mix3抗体,抗OprM-Mix4抗体)が得られ,Western blot法による解析から抗OprM-Mix抗体が外膜タンパク質OprMとの反応性を認めた。 OprD/OprM変異をELISA法により検出する系を構築するためには,反応性のよい抗体をさらに作成する必要があるため,現在,外膜タンパク質OprD, OprMを認識する抗体の作成を継続している。
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