研究概要 |
前年度調製した形質転換大腸菌のライブラリー(3.1x10^7種)にVCSM13ヘルパーファージを感染させ,ファージ粒子上に一本鎖Fvフラグメント(scFv)を提示したファージ抗体ライブラリーを調製した.調製したファージ抗体ライブラリーを,コルチゾール(CS)の3位4位および21位にウシ血清アルブミン(BSA)を結合させた抗原を用いてパンニングを行った.すなわち,各種抗原をそれぞれ固定化したチューブに,ファージ抗体ライブラリーを反応させたのち洗浄し,0.1Mトリエチルアミン溶液を添加して抗原と反応しているファージを回収した.回収したファージは大腸菌に感染させたのち,再度ファージ提示を行い,次のパンニングに利用した.これら一連の操作を3回および4回繰り返して回収されてきたファージ群について,上記抗原に対する結合活性を調べた.すなわち,抗原固定化プレートにファージ抗体を反応させて洗浄したのち,西洋ワサビペルオキシダーゼ標識抗ファージ抗体および発色基質を順次反応させ,得られるシグナルを吸光光度法により測定した.その結果,CSの3位および4位BSA結合体(CS-3-BSS,CS-4-BSA)固定化チューブに対して4回パンニングしたファージ群において,対応する抗原との反応性が認められた.そこで,これらファージ群を大腸菌XL1-Blue株へと感染させてクローン分離したのち,再度ファージ提示し,同様に結合活性を調べた.その結果,CS-3-BSAおよびCS-4-BSAに反応性を有するクローンの獲得に成功した.このファージを大腸菌XLOLR株へと感染させて得られる形質転換菌から,scFvタンパク質を調製し,その抗原結合能について調べたところ,先と同様の結合活性が確認できた.しかし,競合法によりCSとの反応性を調べた結果,添加するCS量の増大に伴うシグナルの減弱は認められず,得られたscFvはCSとBSAの複合体を認識している可能性が示唆された.
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