研究概要 |
【背景、目的】若年層への薬物乱用拡大が危惧される中で,教育機関における学校薬剤師を活用した薬物乱用防止教育に対する期待が高まっている。本研究では,学校薬剤師の薬物乱用、依存に対する意識、態度の実態を把握し,その課題を明らかにする。そこで,A県の学校薬剤師374名(女性59.2%,平均年齢55.9歳)を対象に質問紙調査を実施した。 【研究成果】対象者の57.8%は,薬物乱用防止教室の講師経験を有しており,講演経験数は平均3.7回であった。講演の準備状況を3段階で尋ねたところ,「できていない」という回答が68.3%と最も多く,「何とかできそうだ」が30.2%,「十分にできている」が19.6%と続いた。また,薬物乱用、依存の知識を4段階で尋ねたところ,「十分にある」という回答は1.5%と少なく,「それなりにある」が49.1%,「十分とはいえない」が43.3%と続いた。 今後,講演依頼があった場合,「引き受けたい」とする回答が81.5%,「断りたい」とする回答が18.5%であった。「断りたい」と回答したグループは,「引き受けたい」と回答したグループに比べ,講演経験を持たない割合が高く(77.3%vs34.0%),講演経験数が少なく(4.0回vs1.3回),講演準備が十分ではない(68.3%vs3.9%)や,知識、情報が十分ではない(80.3%vs42.0%)とする者が有意に多かった(いずれもp<0.001)。 【意義、重要性】学校薬剤師の薬物乱用、依存に対する意識、態度や,薬物乱用防止教室の実態の一端を把握できたことは,学校薬剤師に対する支援を考える上で意義の高い研究である。講演依頼を否定的に捉える背景には,薬物乱用に関する知識、情報の不足,講師の経験不足などの要因が考えられ,研修会の開催やマニュアル作成等を通じて,学校薬剤師への支援を充実させていくことが必要だと思われる。
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