研究概要 |
本研究では,MAPキナーゼを制御するMAPキナーゼフォスファターゼによるタイトジャンクション蛋白発現制御をin vitroで検討し,in vivoでは腸炎抑制効果を検討することを目的とした. 1.組換えアデノウイルスを用いたin vitroでの検討 MKP(1,3,7)とWip-1のそれぞれを発現する組換えアデノウイルスを大腸上皮細胞に前投与し,過酸化水素刺激(500μM)下での,クローディン(1,2,3,4,7)の発現変化をWestern blotting, real time PCR,免疫蛍光染色を用いて検討した.Wip-1蛋白の発現確認は,抗Flag抗体を用いてWestern blottingで確認した.またこれら感染細胞で過酸化水素刺激による大腸上皮粘膜透過性の上昇(電気抵抗値の低下,FITC dextranの透過性上昇)は抑制された.Wip-1発現により過酸化水素刺激によるクローディン-4の局在変化は抑制された.MKP発現アデノウイルスでは明らかな変化はみられなかった.Wip1が過酸化水素刺激による大腸粘膜透過性上昇を抑制することが明らかとなった.またこの機序にタイトジャンクション蛋白:クローディン-4が重要であることが明らかとなった. 2.MKP発現組換えアデノウイルスを用いた腸炎抑制効果の検討 これらアデノウイルスの効果をin vivoで検討するため4%DSSをC57BL/6J-664マウスに7日間自由引水させることによりDSS腸炎マウスモデルを作成した.In vivoでの検討を行うため,Wip1発現アデノウイルスを調整した.作成したアデノウイルスの効果を検討するために,種々の濃度で経肛門的に投与し,便性状,貧血,体重,大腸長,大腸重量,大腸組織内myeroperoxidase(MPO)活性あるいは病理組織学的変化の検証を試みた.これまでのところWip-1発現アデノウイルスによる腸炎抑制効果は明らかでない.今後は投与方法の工夫が必要であると考えている.
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