研究概要 |
ラットアルギニン膵炎モデルでは、アルギニン投与3日後にはほとんどの腺房細胞が脱落又は変性、duct-like tubular complexの組織像を呈し、その後、腺房細胞の増殖、腺房の再生が観察され10日後にはほぼ正常膵にまで回復した。増殖のマーカーであるBrdUおよびPCNA陽性細胞は、アルギニン投与3日後にduct-like tubular complexに、アルギニン投与5-9日後に腺房細胞に散見された。そこで、duct-like tubular complexに増殖細胞の出現が認められる、アルギニン投与3日後において、膵の分化増殖能を持つ細胞マーカーの候補としてc-Met, PDX-1, Nestinの発現を免疫組織学的に検討した。 c-Metは正常膵において血管上皮に発現が認められ、膵炎後の再生増殖期に有意な発現の増強は認められなかった。PDX-1の発現は増殖したduct-like tubular complexに強く見られ、そのduct-like tubular complexを取り巻くようにNestinの発現を認めた。以上より、PDX-1陽性細胞が腺房細胞の前駆細胞である可能性が示唆された。 次に、PDX-1陽性細胞の性質を調べるため、膵管細胞のマーカーであるCytokeratin 19(CK19)と腺房細胞のマーカーであるAmylase(AMY)を使用して、PDX-1と2重染色を行った。PDX-1陽性細胞はCK19陽性・AMY陰性で、膵管細胞の性質を持っていると考えられた。 PDX-1陽性細胞の、腺房細胞への分化能をin vitroの系で確かめるため、Ficolを用いて膵の細胞を分離し、PDX-1陽性細胞の分離・培養を現在検討中である。
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