研究概要 |
申請者は本研究で新たな幹細胞のソースと考えられる脂肪組織中の心筋幹細胞の単離及び分化誘導のメカニズムの解明を目指し、本年度は以下の成果を得た。 1.脂肪組織中の心筋幹細胞存在の可能性 培養条件の工夫により遺伝子操作無しで脂肪組織由来の細胞から自己拍動を有する細胞の誘導に成功した。特に、褐色脂肪組織由来の細胞から非常に効率よく同細胞が出現することが判明した(以下、本細胞をBATDC : bat tissue derived cellとする)。BATDCは毎分100から250回で収縮し、心筋特有の抗原をmRNAレベル及び蛋白レベルの双方で発現していた。また、電子顕微鏡による観察でも、細胞の中心に単核〜2核の核が存在し、細胞質には豊富なミトコンドリアとNa利尿ペプチドの存在が確認され、生体内に存在する心筋細胞と同じ表現型を呈していた。 2.BATDCのin vivoにおける心筋再生の可能性 BATDCがin vivoにおける心筋構築への貢献度を調べるためにラット心筋梗塞モデルを作成し、その虚血部位にGFPラット由来のBATDCを移植した。心エコー図による検討では、BATDCを移植したグループでは骨髄細胞を移植したグループに比し有意差を持って心機能の改善とリモデリングの抑制効果を認めた。また、免疫組織学的検討にて再生心筋細胞にGFPの発現を認めた。BATDCにおいて血管新生因子であるVEGF,b-FGF,HGFがいずれも高発現がしていた。以上よりBATDC自身が心筋細胞に分化する能力を有していること、BATDCが血管新生を促すVEGF,b-FGF,HGFを豊富に分泌することがin vivoにおける心筋再生に貢献していると考えられた。(以上B.B.R.C in press) 3.BATDC中の幹細胞の自己複製に関わる因子及び心筋細胞誘導因子の存在の可能性 BATDCと骨髄細胞(GFPマウス由来)の共培養を施行したところ、BATDCのある一部分の下に骨髄細胞が潜り込み、あたかも造血幹細胞のcobble stone現象の様な振る舞いが観察できた。 また、骨髄細胞が高効率に自己拍動を有する心筋細胞に分化した。 以上のことはBATDC中に自己複製に関わる因子と心筋細胞への誘導因子が存在することを示唆する。(以上論文投稿中及び特許出願済み)
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