研究概要 |
マンナン結合タンパク質(MBP)は異物の糖鎖を認識する補体レクチン経路の第一因子であり,自然免疫において重要な役割を果たす。IgA腎症における補体レクチン経路の役割について詳細に調べる目的で,IgA腎症モデル動物であるHIGAマウスにLPSを投与することにより腎炎増悪モデルを作出した。LPSを投与したHIGAマウスにおいては投与しなかったマウスに比べて,糸球体内の細胞数の増加とPCNA陽性細胞が有意に増加した。これは腎炎増悪に伴うメサンギウム細胞の増殖を反映したものと考えられた。この腎炎増悪に伴い,MBP-Cの沈着の有意な増加が認められるとともに,IgAおよび補体C6と共局在することが蛍光抗体法により観察された。このことから,MBP-CがIgAに結合しさらに補体系を活性化することにより炎症増悪に関与することが示唆された。さらに,高マンノース型によく結合するコンカナバリンA染色を穏和なプロテアーゼ処理の後に行ったところ,LPS投与したHIGAマウスの糸球体において顕著な陽性領域の拡大が認められた。このことから,MBP-Cの沈着増加はその糖鎖リガンドの増加に由来する可能性が強く示唆された。また,LPS投与したHIGAマウスの糸球体においてvon Willebrand因子(vWF)の沈着が顕著に増加し,MBP-Cとほぼ同じ部位に局在することを見い出した。vWFは高度に糖鎖修飾を受けるタンパク質であることから,vWFもMBPの糖鎖リガンドとして炎症増悪に関与する可能性が示唆された。
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