研究概要 |
末梢神経障害における軸索イオン電流の変化、特に慢性疼痛の発生メカニズムの解明を目的にした研究である。軸索の自発発射に関与するNa電流に注目し、 (1)慢性疼痛の原因として最も有病率の高い糖尿病性末梢神経障害における軸索Na電流の変化 (2)慢性疼痛を呈するその他の各種末梢神経疾患における軸索Na電流の変化、 を明らかにすることを目的に検討を進めている。 現在までに以下の結果を得て、その一部を論文として公表した。 (1)糖尿病性末梢神経障害患者96名における軸索Na電流、K電流の測定を行った。高血糖下の代謝異常により軸索Na電流、K電流とも抑制され、神経伝導が障害されることを示した(Misawa et al., Clinical Neurophysiol 2005a, b ; 2006)。 (2)糖尿病性末梢神経障害患者において、高血糖による軸索Na電流及び神経伝導異常が、強化インスリン療法またはアルドース還元酵素阻害薬投与により是正されることを示した(Misawa et al., Clinical Neurophysiol 2006 ; Misawa et al., Neurology 2006)。 (3)各種原因における慢性末梢神経障害患者93名において、運動神経軸索での軸索Na電流増大を示した(Tamura et al., Clinical Neurophysiol 2006)。感覚神経軸索においても軸索Na電流が増大をしていることを示すデータを得ている。 (4)正常人12名において、血清K濃度の生理的変動が軸索興奮性に影響することを示した(Kuwabara et al., Clinical Neurophysiol 2007)。 (5)慢性疼痛を訴える末梢神経障害患者10名において軸索Na電流の上昇が見られ、Naチャネル阻害剤である、塩酸メキシレチンの経口投与により、疼痛の改善に伴い軸索Na電流低下が生じることを示すデータを得ている。
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