研究概要 |
【平成18年度の研究目的】 昨年度は生細胞内でポリグルタミン鎖が実際に核へ移行する現象をリアルタイムで可視化する細胞実験系を確立した。本年度はこれらの細胞系を用いて伸長ポリグルタミン鎖に特異的に結合しうる核移行関連蛋白の同定を目指した。 【方法】 蛍光標識二次元ディファレンスゲル電気泳動(2D-DIGE)を用い、正常および異常伸長ポリグルタミン鎖発現細胞溶解液(HEK293)を蛍光標識し、Ettan DIGE System(Amersham)にて蛋白スポット解析を行った。両者で発現量に差異のあるスポットを検出し、核移行に関連する蛋白の同定を目指した。 【結果】 全2521spotのうち、伸長ポリグルタミン鎖発現細胞(Q79)で有意(p<0.05)にvolume ratio1.5以上に増加したものは12個,-1.5以下の減少は8個と、変動した蛋白は少数であった。最大に変化したものはL-plastin(2.91,p<0.001)だった。L-plastinはactin結合蛋白であり、actin機能に関与していると考えられる。ポリグルタミン病では細胞骨格蛋白を介したシナプス機能異常による機序が推察されており注目されるが、ポリグルタミン鎖の核移行もしくは核内貯留に関連する機能は想定されない。その他、増減のあったspotはwestern blot解析では再現性のある発現変化は確認されなかった。今回検討した細胞系でのプロテオミクス解析では、核移行や核内貯留に関係する関連蛋白は同定されなかった。
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