研究概要 |
1.ドパミン神経幹細胞の増殖・分化の解析: H17年度,ラット中脳由来ドパミン神経幹細胞の培養を行い,各種サイトカインによる刺激を加えて分化・増殖させ,その種々の段階でケトン体(D-βヒドロ酪酸)を投与し,ドパミン神経幹細胞の分化・増殖に対する効果を検討したが,獲得できるドパミン神経細胞の割合が低く,不十分な結果であった.効率よくドパミン神経細胞を得るため,H18年度は前年度の結果をふまえて,より広範な条件での解析を追加し,ケトン体の中脳由来神経幹細胞の増殖と分化に対する効果および神経栄養因子など既報の刺激シグナル(BDNF, GDNF, dopamineやpramipexolなどのdopamine agonist, Retinoic acid, folskolin等)とケトン体の影響をRT-PCR法および蛍光免疫染色法により分析した.また,ケトン体の神経保護効果についてドパミン系神経細胞株SH-SY5Y細胞を用いた検討を行った.ケトン体はロテノンなどの神経毒によるアポトーシスを抑制し,ミトコンドリアを介した機序で神経保護作用を有することを証明した(Journal of Neuroscience Research 2006).さらに,初代中脳神経培養においてホモシステインがドパミン神経細胞に対して毒性を有することを証明し(NeuroReport 2006),ホモシステイン毒性モデルにおいてpramipexoleが抗酸化作用を有し,神経保護効果を呈することを示した(Soc Neurosci Abst 2006). 2.ドパミン神経幹細胞の移植に関する検討: 胎生ラット由来ドパミン神経幹細胞の培養を行い,ケトン体や各種サイトカインによる刺激を加えて増殖・分化させ,ラットの線条体へのドパミン神経幹細胞移植によるパーキンソン病治療モデルの確立を試みた.
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