研究概要 |
筋萎縮性側索硬化症(amyotrophic lateral sclerosis:ALS)は,運動ニューロン変性により進行性の筋萎縮を主症状とする疾患であり,未だ有効な治療法が確立されていない.これまでの検討で,我々はALSの新たな治療法を見出すため,運動神経系の再生・再ミエリン化,そして運動機能の回復を促進する事が報告されている嗅神経被膜細胞(olfactory ensheathing cell:OEC)を用いた細胞移植法の検討を行った.その結果,マウスにおける細胞移植法を確立し,脊髄へのOECの生着を確認することができた. さらに移植手技としては前回と同様な方法を用いて,ラット骨髄より採取した間葉系幹細胞(MSC)を移植片細胞として検討を行った.MSC移植群とコントロール群における発症日齢,死亡日齢,病期の比較では,いずれもMSC群が有効な傾向を示したものの有意差は認められなかった.しかし性別に解析を加えると,MSC移植雌マウスは,コントロール雌マウスに比べ有意に病気の延長が認められることが判明した. 以上これまでの検討でMSC移植の有効性が示唆された.今年度は,前回までのラットではなく,マウスMSCを利用して,免疫抑制剤を使用することなく移植の効果を検討している.特に移植時期を検討することにより最大の効果を得られる移植のタイミングを検討している.現時点で最終結果は出ていないが,発症約一ケ月前,発症直前のいずれのじきに移植しても,有効性がみられている.
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