近年DBS手術法が確立され、脳深部埋込み電極からのSEP直接記録に関連した論文が散見されるようになった。しかし、そのいずれもが安静時のSEP記録に限られており、運動中・運動準備状態でのSEP gatingの解析にまで踏み込んだ報告は未だない。我々の確立したpre-movement gating記録法は、筋収縮による筋知覚受容器からの末梢性入力の干渉を受けることなく、運動準備状態での中枢性gatingを検出することができる。体性感覚入力が一次運動野からの出力に影響を与える場としては、視床及び大脳皮質(特に運動前野・補足運動野)が重要と考えられている。本研究は(1)皮質下(視床)でのSEP gatingの有無を調べ(2)運動中・運動準備状態での感覚情報処理に疾患特異的な相違があるかどうかを検討中である。これまでに我々の施設では39名(内ジストニア18名、パーキンソン病20名、本体性振戦1名)のDBS治療を行い、埋め込み電極からのSEP記録・解析を継続している。本研究は、皮質・基底核・視床を含む運動ループに体性感覚情報がどのように取り込まれ利用されるのかという運動感覚連関をめぐる諸問題を、システム全体として解明し理解する為の一助となるものである。
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