研究概要 |
目的:日本人多発性硬化症(MS)患者において脱髄発作の再発や進行を予測する。 成果1:MS患者27名(二次性進行型MS (SPMS)、再発寛解型 (RRMS)、視神経脊髄型 (OSMS))、健常対照(NC)7名の血漿Matrix Metalloproteinase-9(MMP9)とTisssue Inhibitor of Metalloprotainases-1 (TIMP-1)をELISAで分析した。また、末梢血リンパ球からCD4、CD8陽性T細胞を分離し、T細胞レセプター(TCR)レパトアをCDR3スペクトラタイピングで分析した。その結果、MMP9はNC, RRMS, OSMSに比しSPMSで高値を示し、TIMP-1は各群間に有意差なし。よってMMP9/TIMP-1はSPMSでNCに比し有意に高値を示し(p=0.029),RRMS, OSMSに比してもSPMSで高値であった(p=0.057).SPMSのTCRレパトアは,CD4よりもCD8陽性T細胞に有意に多くの活性化Vβを認めた.以上から、SPMSの進行にはMMP9やCD8陽性T細胞が,RRMSと異なる免疫学的機序で関与している可能性があることを解明した。 成果2:MS患者27名を大脳に病変のある群とない群に分け、HLA分析を行ったところ、大脳に病変のある群の方が、OSMSに特異的と言われるDPB1^*0501アリルを持つ確率が有意に高かった。そのためさらに詳細に臨床症候を検討すると、HLAに加えてneuromyelitis poptica (NMO)に特徴的な症候(脊髄の長い病変、失明、髄液細胞数増多)を複数持つ患者では、インターフェロン治療により悪化または重大な副作用を示した。以上から、MSの病型分類は大脳病変の有無で行うべきではなく、NMOの特徴を複数持つ患者にはインターフェロンを用いるべきでないことを明らかにした。
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