研究概要 |
腫瘍細胞が過剰発現し,末梢寛容の誘導が不完全な自己抗原の中から新たな腫瘍抗原(TAAs)を同定し,同種造血幹細胞移植(allo-SCT)ドナーとレシピエントのTAAsに対する寛容の差を考慮したワクチン療法の開発を進めている.細胞周期調節タンパクであるCDK2タンパクは白血病細胞で過剰発現しており,HLA-A^*2402陽性健常者のCD8陽性ナイーヴT細胞からCDK2由来のHLA-A^*2402拘束性9mer自己抗原ペプチド(CDK2_158, CDK2_178)特異的細胞傷害性T細胞(CTL)が誘導される.HLA一致allo-SCTドナーから誘導したCDK2由来ペプチド特異的CTL(CDK2-CTL)は,ドナー及び患者の正常血液細胞と患者白血病細胞のCDK2タンパクの発現量の差を認識して,患者白血病細胞のみを特異的に傷害する.昨年度に引き続き,18例のHLA-A^*2402陽性移植例を対象として,allo-SCT後のCDK2に対する免疫の誘導と抗白血病効果との関連性を,CDK2ペプチド/HLA-A24マルチマーを用いて検討した.移植後CDK2-CTLが検出された7例は全例寛解を維持しており,移植時に血液学的寛解で分子学的微小残存病変(MRD)が検出されていた(腫瘍量が少ない)例では,移植時分子学的寛解(腫瘍量が全くない)例や血液学的再発(腫瘍量が多い)例に比べて移植後のCDK2-CTL誘導率が有意に高いことが確認された(p=0.02).骨髄性白血病患者の診断時末梢血から純化し,TNFαの存在下で短期間培養後に成熟させた白血病細胞由来樹状細胞(LDC)を抗原提示細胞として,HLA-A^*2402陽性健常者のCD8性ナイーヴT細胞を繰り返し刺激して誘導した培養T細胞は,寛解時患者末梢血単核細胞には反応せず,患者白血病細胞との共培養でIFNγを産生した(0.34%vs10.5%).この白血病細胞反応T細胞の中には,LDC刺激前には検出されなかったCDK2ペプチド/HLA-A24マルチマー陽性細胞が検出され,白血病細胞反応T細胞はCDK2ペプチドに反応してIFNγを産生した.allo-SCT後にCDK2-CTLが誘導されるメカニズムとして,移植時にわずかに残存するLDCがドナー由来のT細胞をプライミングし移植後CDK2に機能的結合性の高いCTLが誘導され,残存する白血病を特異的に傷害することが示唆された.
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