研究概要 |
関節リウマチの関節炎の発症および維持には,関節滑膜を増生させるための新生血管が必須である.血管新生のメカニズムとして従来の既存血管内皮細胞の再形成のほかに血管内皮前駆細胞(EPC)からの発生が関与することが明らかになった.VEGFやSDF-1などの刺激により,骨髄中MMP-9やsKitLなどの発現が増加し,骨髄中から末梢血中へEPCが動員されると報告されている.したがって,関節炎における血管新生においても,骨髄中のVEGF,SDF-1,MMP-9,sKitLなどが関与しているか検討した.具体的には,コラーゲン誘導性関節炎を誘導し,day7,14,21,28,35に後枝足関節の滑膜部と骨髄部に分けtotal RNAを抽出し,血管新生関連因子をRT-PCR法で検討した. 関節滑膜と骨髄の両方においてSDF-1の遺伝子発現は,day7,14,21,28,35と経過するにつれて上昇する傾向にあった.関節滑膜におけるSDF-1の発現ピークはday28で,day7と比較して約1.8倍であった.骨髄におけるSDF-1の発現ピークはday35で,day7と比較して約2.7倍であった.興味深いことに関節炎の病巣の首座である滑膜より骨髄での上昇率の方が高かった.滑膜と骨髄ともにVEGFの遺伝子発現は,関節炎発症前と比較して発症後の方がやや高い傾向があったが明らかな傾向は認められなかった.上昇率に関してもほぼ同様であった.次にMMP-9およびsKitLの解析を行った.MMP-9の遺伝子発現は,関節部ではday28から増加傾向となった.骨髄ではday7からday35まで常にほぼ一定であり,関節部より高発現していた.sKitLの遺伝子発現に関しては,関節部の方が骨髄より常に高く,経時的変化は共に見られなかった.よって,骨髄では,SDF-1のみが関節炎の発症に伴い増加する因子であることが分かった.
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